2008年6月議会 一般質問

■一般質問

市民派ネット 中西とも子

◎箕面市の入札に関する改革の方向性について

―公平・公正・適正な公的事業委託や公共工事などのあり方を問う―

2月議会の一般質問において、箕面市の公共工事コスト縮減にについて質疑がかわされましたが、無駄なコストを廃し、「悪かろう・安かろう」工事をなくすことは地方自治体の責務であることは言うまでもありません。

そのためには行政が合理的なシステムを採用していただくことと、議会や市民がしっかりチェックできる体制の整備が必要です。

また、一方で安さを追求するあまり、工事や民間委託事業ではダンピングが社会問題となっており、労働者に対するしわ寄せや手抜き工事が懸念されています。

市は、例えば同一入札価格の場合は「抽選」という手法を採用していますが、もっと市の政策実現、社会的価値の実現をはかるために最適な業者を選択する入札契約制度の改革や事業委託を行うべきではないか、との観点から以下の2項目の質問を行います。

まず、公平・公正で透明性が確保された公共工事のあり方を問うものです。

本年度、第1回定例会における、牧野直子議員の公共工事のコスト縮減対策を問う一般質問に対して「サンプラザ再編整備においては、文化・交流センター、郷土資料館、タウンインフォメーションスペースなどを複合的に整備することにより、コスト削減に努めてきた」という答弁がありました。しかし、改修工事費について「適切な業者選定」はどのように行われたのでしょうか?「適切な業者」の基準とは何でしょうか?そしてどれくらいコスト削減につながったのでしょうか?

文化交流センターの改修工事は、2005年11月から2007年3月にかけて行われました。これは箕面駅前サンプラザ1号館内の地階と3階・4階・8階部分の改修工事のことで、地階は郷土資料館と文化・交流センターの市民ギャラリー、多目的スペース、タウンインフォメーション、フリースペース、3階は他世代交流スペース、屋上広場、4階は音楽スタジオや会議室、和室など、8階は大会議室となっています。全体で約5億4,700万円の工事でした。また、このサンプラザ改修工事の落札率は地階改修工事が97.97%、地階改修に伴う電気設備工事が85.50%、しかし、この電気設備工事は3階から8階部分については随意契約となり、なんと100.0%の落札率になっています。さらに、地階の機械設備は96.79%で3〜8階部分の随契は99.8%です。同じく地階の展示工事は96.03%、地階現場監督委託は98.12%で、これも3〜8階工事の随意契約は99.63%とアップしています。落札率の数字をみて、これが適正だというご判断でしょうか?

さらに、地階タウンインフォメーション等設備の追加工事費には大型テレビ購入代も含まれています。これは当初の見積もりにはなかったものであり、本来ならば備品購入費として補正予算で計上されるべきではないでしょうか?この大型テレビはカウンターの上に置かれただけになっていて、特別な工事が行われた様子はありません。電気量販店で購入した方が安上がりだったのではないでしょうか。

また、タウンインフォメーションのカウンター部分がつぎはぎ状態で、少々お粗末な仕上げになっています。複数箇所にあるつぎはぎ部分の形状がそろっていないため、やっつけ工事のように見えてしまいます。資材は、よほど安価な予算で行われたのでしょうか?当初からこのような仕上がりを想定されていたのでしょうか。工事の最終確認において、誰がどのようにチェックをしてOKを出されたのでしょうか?

さらに4階の音楽室の防音工事についても、約100万円の追加工事が行われています。古い建物の改修だったので、工事を行ってみて、やはりまだ防音が不十分だったことがわかったのだという担当課の説明がありました。素人考えかも知れませんが、プロの方が現場を見て設計書を作成されているはずです。一旦工事を行ったうえで、まだ不十分なので再度予算をつけてやり直しを行う、というのは不合理に思えます。

通常、クライアントは指示通りのものが上がってこなければ、請け負い業者に対して、やり直しか値引きという指示を出すものだと思います。これは設計上の問題だったのかどうかも判明していません。

以上の件については私は昨年度の決算委員会でも指摘しましたが、そのときは文教常任委員会でしたので、答弁できる体制ではなかったため、調査してくださるとのことでした。調査の結果を問うものです。

また関連して、工事費内訳書の情報公開について質問します。同改修工事はいくつかの工事に区分して発注が行われ、まず地階の工事、その後随意契約で上位階の改修工事が行われました。この工事の工事費内訳書の情報公開請求をおこなったところ、内訳明細部分はすべて「非開示」とされました。理由は「積算価格は非公開」というものでしたが、これはどのような合理性によるものでしょうか。

たとえば、この3〜8階の工事請負変更契約書を見ると、8,977万5千円から1億364万9,700円に変更されたものがあります。書面上からは3階・6階・7階のパネルや机などの廃棄処分費や3階他世代交流スペースや4階和室のカーテン取り付け費、交流センターや箕面駅前周辺のサイン板取り付け費となっています。しかし、これらの明細も非開示のため、廃棄物の処分費やカーテンを取り付ける費用にいくらかかったのか、急遽決まったサイン板にいくら費用がかかったのか、まったくわかりません。

開かれた市政の実現に向け、市民の知る権利の保障と市民参加を促進するためにも、また市民に対する行政の説明責任を果たすためにも工事費内訳書は公開すべきであるし、工事の透明性と市民チェックの機会は確保されるべきであると考えます。

ちなみに、2007年3月に大阪地方裁判所においてほぼ同趣旨の公文書非公開決定処分取消請求事件で、処分行政庁が原告市民に対しておこなった非公開決定を取り消す判決が言い渡されました。当該行政庁は、控訴しなかったため、大阪地裁判決は確定しています。この裁判は、大東市立小・中学校の校舎改修工事について、「市が入札参加者の工事内訳書を非公開としたのは不当である」として、市民が市に公開を求めたものです。市は「公表すれば業者の技術やノウハウが流出し、公正な競争が侵害される」などと情報開示を拒否していましたが、判決では「公開しても業者の正当な利益は侵害されない」として、非公開決定が取り消されました。

工事にかかわる情報はしっかり情報公開し、透明性と公平・公正性を確保すべきだと考えますが、いかがでしょうか。とりわけ情報公開に取り組んでこられた藤沢市政であるからこそ、従来の壁を取り払っていただけるのではないかと期待し、見解を求めます。

◎公共工事の委託のあり方について

つぎに公共工事のコスト縮減や公的サービス事業の委託のあり方について質問します。

昨今、ほとんどの自治体でローコストマネージメントが民営化手法で進められていますが、同時にその弊害が懸念されています。箕面市とて例外ではないと思われますが、市は公営事業サービス委託をした先の労務管理の実態をどの程度、把握できているのでしょうか?委託先の労働者が低賃金やサービス残業、中抜きなど、不当労働行為や過酷な労働を強いられているということはないでしょうか?民間活力を導入するという美名のもとで、安上がりの人件費という発想に陥っていないでしょうか?

官製ワーキングプアを生まないために、何か手立てをお考えでしょうか?

1999年、地方自治法施行令の改正で、価格だけでない総合的な価値による最適調達を実現させるために「総合評価方式」が法制化され、国や自治体で活用されるようになりました。大阪府でも2003年度から取り入れています。この「総合評価方式」とは従来の価格のみによる自動落札方式ではなく、「価格」と「価格以外の要素」例えば、施工時の安全性や環境への配慮などを総合的に評価する落札方式のことで、具体的には入札者が示す価格と技術提案の内容を総合的に評価し、落札者を決定する方式です。この落札方式を活用しさらに進化させて、多様な政策的価値を入札条件とする「政策入札」が今、注目されています。

入札を「政策を実現する手段の一つ」と位置づけて、行政が適正な能力のある業者へ委託し、委託業務の「質」をアップさせることで、地域独自の「政策」を実現しようとするのが「政策入札」です。

自治体は公正労働基準の確立、環境、人権、福祉などの社会的価値の実現をはたす役割と責任があります。その意味で価格だけを評価して業務の委託先を決定する入札制度を見直す必要があると考えます。従来の「価格入札」を「政策入札」に変えていくためにも、総合評価方式の導入の検討をお願いしたいと思います。具体的な検討会や委員会の設置等、進捗度合いはいかがでしょうか?

一部の自治体では「公契約条例」制定に向けたとりくみが進められており、法曹界や労働組合などでも公契約を考えようという機運が高まっています。

国際労働機関(ILO)は94号条約において、国や自治体などの公的機関が、公共工事や公共サービスを委託する際に、その地域での適正な契約を行わなければならないことを定めています。

このILO条約は、世界60カ国が批准しており、公的機関は契約に際し、その地域の同じ業種の労働者の労働条件を調査して、類似労働者の賃金や労働時間などの労働条件を上回ることを契約の中に明記することになっています。また、安全性や福利厚生面においても充分な措置を講じることを義務づけています。残念ながら日本はまだ批准していません。

たとえば、公共工事で働く下請けの建設労働者の賃金は、契約時の見積もり単価から3割以上もピンハネされるといわれています。

今、規制緩和やアウトソーシングによる経費削減のあおりで、派遣・請負・契約社員などの短期雇用、非正規雇用が常態化しています。格差が拡大し、人が人らしく生きるための雇用形態が保障されないことが、さまざまなひずみとなり、社会問題にもなっています。このような中で、自治体が公契約条例を制定して、公正な発注や適正な賃金、安定した雇用を確保するための礎を築くことは、大変意義のあることであると考えます。

市がどのような社会的価値をめざすのか、基本条例として宣言するためにも「公契約条例」制定を望むものですが、合わせて見解を伺います。

以上、藤沢市政がこの4年間に心血を注いでこられた、情報公開となれ合い政治を経つための、政策の今後の方向性を問うものです。真摯なご答弁を期待して私の質問を終わります。


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