2011年9月議会 一般質問

●一般質問

◎ 高齢者保健福祉計画および介護保険制度の改定について

2012年度は介護保険法と医療法の同時改正の年にあたります。
箕面市では高齢者保健福祉計画や介護保険事業計画について第4期の計画の進行管理をおこない、第5期の計画策定に向けて、ニーズ調査や関係団体へのヒアリングを実施しながら、当市における課題整理を進めてこられました。

国立社会保障・人口問題研究所の推計では10年後には高齢化率が30%になり、2005年に10%だった一人暮らしの割合は2030年に25%になるといわれています。女性も50、60代での単身化が進み、男女合わせた全世帯で一人暮らしは4割に迫るというデータがはじきだされています。

箕面市においても高齢化率は年々増加しています。高齢化がピークとなる2025年問題は当市も例外ではなく、高齢者の単身世帯増加や地域コミュニティーの醸成を課題とする都市型高齢社会に向けた対策は非常に重要です。くわえて格差がこのまま拡大していくことによる課題も想定しなければなりなりません。

介護保険制度が始まって10年が経過しました。第1回目の改正から5年が経ち、このたび2回目の見直しがおこなわれます。1回目の制度改正の目的だった予防、地域密着型サービス、医療と介護の連携等はどのくらい達成されたのか、そしてサービスの確保や質的向上という課題とあわせて、市ではどのように総括されているのでしょうか。また介護保険事業の財源問題も深刻であり、持続可能なサービスのためのサービス給付費は給付と負担のバランス問題として、たいへん悩ましい課題です。あるいは介護保険3施設の居住費・食費の見直し、いわゆるホテルコスト分によって受けたであろう低所得層への影響については、その負担軽減策とも合わせて検証の必要があると考えます。

これまでの成果と課題を踏まえて、来年度からの法改定にかかわる市の取り組みと、高齢化社会に向けた当市のまちづくりの方向性について、ともに考え模索していきたいとの思いから一般質問をおこないます。


1点目に、これまでの高齢者の介護保険事業を含む保険福祉政策について、どのように総括されているのか、質問します。

第4期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画について進行状況報告、進行管理の一覧がまとめられています。また、第5期の計画策定に向けて40歳から64歳までの2号被保険者と65歳以上の1号被保険者および現在介護認定を受けている市民へのアンケート調査が実施されており、さらに介護保険事業者や家族介護者の団体からのヒアリング報告もまとめられています。丁寧な調査が行われたと思いますが、私は介護保険ホットラインの電話相談ボランティアで、府下の高齢者や介護家族、介護労働者の声を聞くことがありますが、本市で行われた調査で得られた声を重なるものが多数ありました。どの自治体も苦労していることと思いますが、第4期の計画について、市としてはどのように総括し、第5期の計画策定に向けた課題整理をおこなっておられるのか、お伺いします。

まず地域包括ケアシステムについてですが、このシステムの原点は尾道市の(現在の)みつぎ総合病院にあるといわれています。たとえば、外科手術後にリハビリを受けて退院した患者が在宅復帰後に寝たきりになるのを防ぐためにおこなった「出前医療」がきっかけとなり、その後介護施設や福祉施設等を病院に併設して、「地域包括ケアシステム」体制が整えられたとのことです。また国民健康保険法でもその指針のなかで保健・医療・介護・福祉が連携した地域包括ケアシステムが定義され、重要性が示されています。介護保険制度による「地域包括支援センター」の役割は、この地域包括ケアを推進することでもあるともいえます。本人や家族の意向が尊重され、年を重ねても基本的人権が守られる包括ケアの実現はすべての高齢者と家族介護者の願いでもあると考えています。

このような地域住民のニーズに応じて健康づくり、医療サービスや在宅ケア、リハビリテーションなどの介護を含む福祉サービスを一体的・体系的に保健・医療・介護・福祉の関係者が連携して提供する仕組みは、もう何年も前から重要視されてきましたが、未だ整備途上にあるといえるのではないでしょうか。先に述べた事業者ヒアリングにおいても、「システム整備と高齢者ひとりひとりに合った適切なサービスの提供」について、不十分であるという回答がほとんどであったと思います。何が不十分でどこを強化していかねばならないのでしょうか。
つぎに医療との連携についてですが、ケアマネージャーとかかりつけ医との間で活用されている「連携シート」などで進んできた例もありますが、実際には医師に認知症の特性についての理解がなかったり、円滑な連絡体制が整わなかったり、柔軟な対応がなされていないという例もあるなど、まだまだ課題が解決されていない現状です。あるいは訪問看護、24時間対応など、在宅で重度の要介護者を安心して介護できる体制が圧倒的に不十分です。医師との連携は双方が積極的に働きかけないと進みづらいと思いますが、連携強化に向けて今後は、どのような働きかけを行っていかれるのでしょうか。

さらに介護予防策の推進についてお伺いします。
 要支援・要介護認定の推移と介護予防の成果についての見解についてですが、第1回目の制度改定によって要介護1から要支援への移行が国の指導で進められたことがあるため、単純には「介護予防の進化」と評価できない側面があるように思います。そのことは、事業者ヒアリングからも「介護保険制度による介護予防メニューが実態に即していないのではないか」いう趣旨の意見が寄せられていることにも表れています。

介護予防の重要性は言うまでもありませんが、閉じこもり対策や高齢者の自主的な活動の支援は十分でしょうか?さまざまな事業が適切に周知されているでしょうか?生涯学習や交通政策、健康増進、広報をはじめ、関係各課との連携はどのように進んでいるのでしょうか?)

また、もっと若いうちから健康に関心をもつための体勢づくりが大切ではないでしょうか?事業者へのヒアリングでも、意識が根付いていない、という意見が多かったのですが、生活習慣病にならないような食生活、規則正しい生活リズムや適度な運動、ストレスを溜めず、なるべく免疫力を高めておくことも大切です。介護予防の多角的なメニューと取り組み、周知が必要ではないでしょうか?
また、高齢者の本音として、なるべく地域で、在宅で暮らしたいと願う人が少なくないですが、アンケート調査の住まいについての項目では、玄関の敷居や段差に不便を感じている方がトップにきていました。バリアフリーの住宅は重要ですが、民間では高齢者ゆえに賃貸を拒否されるケースも散見されます。今後、安価なケアつき住宅などももっと必要ではないでしょうか?また、各種の生活支援サービスについてはどのようにお考えでしょうか?

以上、地域包括ケアシステムについては、一定進んだものや、あるいは部分的には進んでいるものの、総体としてはまだまだ力をいれなくてはならない課題がありますが、ソフト面・ハード面の課題があるとすればどのようなものでしょうか。

認知症対策についてですが、昨今さまざまなメカニズムが解明されてきました。薬や対応の仕方、周囲が理解して接することで本人も家族も救われます。市では認知症サポータ養成講座などをはじめ、各種の講座を開催していますが、高齢化が進むなかで、今後より一層の取り組みが求められるのではないでしょうか?また介護家族のストレスはすさまじいものがあります。家族の負担軽減・支援策はまだまだ必要であると考えます。認知症への理解を深めることや認知症サポート医の紹介、相談機関の充実はいうまでもなく、介護家族のストレスを緩和し情報交換の場とするためのささやかな拠点が地域に欲しいと考えて、これまでも要望してきましたが、現状では家族会のような団体にお任せとなっています。介護家族の居場所の確保にむけて地域資源を活用するなど、是非、検討いただきたいのですが、いかがでしょうか。

なお、権利擁護策についてですが、成年後見制度は複雑で手間がかかるため、現状では使いづらい制度となっています。社会福祉協議会で取り組んでおられる簡易な制度もありますが、これも現実的に対応できない側面があります。認知症と向き合わねばならない本人や家族にとって、お金や財産管理は避けて通れない課題のひとつです。その解決策について今後どのように検討されているのでしょうか?

さて、介護労働者の立場からの質問です。従来アンペイドワークとして評価されてきた「介護職」はあまりにも労働の対価が低く、生計が成り立たないために、やむなく転職せざるをえないケースがあります。あるいは介護施設によっては、夜勤が多いために体調を崩したり、夜間、ひとりという人員配置によって、利用者の体調が急変するときなどの対応に苦慮したりなど、心身ともに追い詰められた状況が続き、退職してしまうという例もあります。また厳しい事業所経営のなかで介護サービスを維持・良化しようとすると、介護労働者にしわ寄せ、吸収させようという傾向も見受けられます。このような問題について行政が関与できる範囲でどのように検討されているのでしょうか?


2点目に、第5期箕面市保健医療福祉計画・介護保険事業計画策定や今後の課題についてお伺いします。

来年度からの介護保険制度の改定では、地域の実情にあった包括ケアシステムをいかに構築・強化していくのかが、重点課題となっていますが、当市において重点目標をどのように定め、取り組んでいかれるのでしょうか?

市町村の裁量で進められることがさらに広がったようですが、これから市が独自に取り組みたいと検討していることなど今後の方向性や見通しをお尋ねします。また、現在、地域福祉計画が検討されていますが、地域福祉計画に、このたびの計画策定のためのアンケートや事業者、介護家族のヒアリング等の結果をどのように活かしていくのでしょうか?労力とお金をかけて得た貴重な資料であり、現場のニーズが詰まっています。これらを有機的に活用いただけるよう、お願いしたいと思います。

さて介護保険地域密着型サービスの外部評価において、事業所と市町村との連携について次のようなコメントがありました。
 「箕面市の高齢福祉課の積極的対応をうらやましく思う他市の事業所は多いと考える。介護保険現場を行政に見てもらい、共に知恵と力を出し合い、今後に活かされていることは当然と言えども、他市では大変少ないので賞賛に値する」

この所見のように事業所との連携、協働が市の担当課の努力もあって進められていることを大変嬉しく思います。このような連携が地域の関係機関や住民間においても成し遂げられるよう、切に願っています。

今後、小学校区単位よりもさらに小さな単位、お互いに顔が見える少人数のコミュニティーづくりが望まれます。たとえば現在、地域福祉計画で検討されている地域コーディネイターは、社会福祉協議会さんだけではなく地域住民にも積極的に参加していただけるような体制や人材育成ができないものでしょうか?ただし、地域福祉の課題は多様で、プライバシーの問題も含まれるため、誰もが基本的人権を尊重するという立場を守るという大前提がありますが、検討していくべきではないでしょうか。そしてそのようなネットワークを地域内にたくさん増やしていくことが必要ではないでしょうか?

また地域の住民やNPOで実施する事業を、介護予防事業として位置づけて支援していくという方向性はないのでしょう? 地域住民の自立と、互いに支えあう共生のまちづくりに多くの市民が参画することで、元気な市民が増えれば、医療費や扶助費などの支出も削減につながっていくと思われます。

あるいは、これからのまちづくりにおいて「あらたな公共」を住民が担っていくという積極的な意味において、地域の実態に応じて介護予防かかわる幅広いメニューを企画し、住民自らが担えるようになるための人材育成や支援があってよいと思いますが、どのように考えておられるでしょうか?

冒頭でも申し上げましたが、都市型高齢社会が抱える課題は深刻です。高齢者が孤立しないための制度とまちづくりをセットで検討し計画に反映させなければならないと考えます。
以上、箕面市における高齢化社会を見据えたとりくみについて、質問いたします。

理事者の真摯なご答弁を期待いたします。

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